「いじめっこ、サム」

サムはサメです。

まだ、子供ですが、からだが大きく、

けんかは誰にも負けたことがありません。

だからいつも大いばりです。

周りのサカナたちは、みんなサムが大嫌いです。

でも、サムが恐いので、彼の言うことに逆らうことができません。

「え~い、サムの奴、おいらの餌をいつも横取りして・・・。

こないだも大好物のエビを取られてしまったんだ」

とタコが言いました。

「仕方ないよ。サムもエビが大好物なんだから・・・」

とタイが言いました。

「僕なんか、サムに餌を取られるだけでなく、尻尾でなぐられるんだ。

見てよ、この瘤を!」

とイワシが言いました。

「何か、サムをあっと言わす手はないかなあ!」

とタイが言いました。

「僕に良い案がある。ちょっと耳を貸して」

とタコが言いました。

「それは名案だ」とみんなは言いました。

そして、タコの言うとおりにすることにしました。

ある日、いつも通りにイワシがエビを食べていると、

そこにサムがやってきました。

「やあ、イワシ君!おいしそうなエビだね。僕にくれないか?」

とサムは言いました。

でも、イワシはサムには見向きもしないで、

エビを抱えたまま、サムとは逆の方に逃げて行きました。

サムは「ムッ」として、イワシを追っかけました。

すると、イワシの逃げる先にタイがいました。

タイはイカの持っているエビよりも、

もっと大きなエビを持っているではありませんか。

サムはタイの持っているエビが欲しくなりました。

「やあ、タイ君!おいしそうなエビだね。僕にくれないか?」

とサムは言いました。

でも、タイはサムには見向きもしないで、

エビを抱えたまま、サムとは逆の方に逃げて行きました。

サムは「ムッ」として、タイを追っかけました。

すると、そのタイの逃げる先にタコがいました。

タコはタイの持っているエビよりも、

もっと大きなエビを持っているではありませんか。

サムはタコの持っているエビが欲しくなりました。

「やあ、タコ君!おいしそうなエビだね。僕にくれないか?」

とサムは言いました。

でも、タコはサムには見向きもしないで、

エビを抱えたまま、サムとは逆の方に逃げて行きました。

サムは「ムッ」として、タコを追っかけました。

サムは懸命にタコを追っかけました。

しかし、タコはサムにつかまりそうになるたびに体をくねらせてよけるので、

サムはタコをなかなか捕まえることができません。

あまりにも夢中に追っかけていたので、

サムはとうとう浅瀬にのりあげてしまいました。

運悪くちょうど潮が引いて、浅瀬の水はなくなっていました。

サムは必死でもがきましたが、

からだが大きくて思うように動けません。

「やったぁ!大成功だ!」とみんなが叫びました。

そして、タコがサムに近づいてきました。

サムはタコに頼みました。

「やあ、タコ君。僕を海に戻してくれないか?」

でも、タコはサムの言うことなどおかまいなしに、

サムの顔を目がけて近づいてきます。

そして、タコはサムの目に向けて、突然スミを吐きかけました。

「痛い!」とサムは思わず叫びました。

「やい、サムめ!痛いか?

みんなはいつもお前にいじめられて、痛い思いをしているんだ。

ここでよく反省するがいい」

そう言ってタコはそそくさと海に戻っていってしまいました。

真夏の太陽が照りつける中、サムは一人ぼっちで浅瀬に取り残されてしまいました。

何より海水が十分にはないので、息が苦しくて仕方がありません。

サムは「助けてくれよう~。僕が悪かったよ~」と泣きだしてしまいました。

サムの泣き声はあたり一面に響き渡りました。

サムの鳴き声を聞いたタコたちは、少しサムのことがかわいそうになりました。

仕方なく、タコたちは、サムの後ろに大きな穴を掘って、そこに海水を引き込みました。

そのおかげて、サムは海水をあびることができて、呼吸もできるようになりました。

しばらくすると、少し潮が満ちてきました。

サムはようやく海に戻ることができました。

「今までいじめて悪かったよ。もうしないから仲良くしてくれよ」

とサムはみんなに謝りました。

サムがあまりにも一所懸命に謝るので

タコたちは、サムを許してあげることにしました。

そして、タコたちはサムと仲良く友達になりましたとさ。

                                  【おしまい】